森林動態制御研(國崎研)

2024年度から勤務28年目です。

2024年4月14日(日)

  • 勤務28年目になって強く感じるのは,学生さん達の
  1. 情報共有スキルの変化
  2. 対話スキルの変化

である。
 
 おかげ様で,私が勤務し始めて以降の卒業生のうち数名が教員として戻ってきてくれている。彼らが大学生だった頃を振り返ると,今より情報共有ツールが貧弱だったこともあり,「対面による情報共有」を主に,不足分を「メール」で補っている感じであった。例えば,教員がある学生さんに連絡し,学生間共有をお願いすると,口頭とメールで確実に共有してくれていた。
 
 その後,LINEが普及し始めると,徐々に学生さんのメール使用スキルが落ち始めた。それでも,教員が任意の学生さんに連絡し,学生間共有をお願いすれば,LINEグループなどで共有してくれていたので,それほど(教員目線で)困ることはなかった。ただ,野外実習などで,たまたま近くにいた学生さんに口頭での情報共有を頼んでも,共有してくれない状況が生じ始めていた(註:例えば,全体説明時に失念していた事項として,「リュックの汚れや濡れを予防するために新しいゴミ袋を人数分準備していたので,自由に使って良い」旨を共有して欲しいと伝えたものの,ほとんど共有されず,一方で実習中に「リュックが汚れる(濡れる)」といった困惑の声が聞こえる場面が散見され始めた)。
 
 2020年度になり,新型コロナ感染症対策の一環として,LMSが全学的に導入された。LMSでは教員が自由に掲示板を作成したり,任意の学生さん宛にメールを送信できるようになり,これで教員の連絡方法が充実すると当時は喜んだものである。マイクロマネジメントが得意な私は,LMSの掲示板・タイムライン・メールを併用しながら連絡の充実化を進めたつもりであった。しかし,この4年間で強く感じるようになったのは,活字情報として書かれている連絡事項を把握していない,もしくは忘れる学生さんが予想以上に多い状況であった。用意周到に情報をとれる学生さんには過剰すぎるものの,一部の学生さんには情報が認識されない。そのため,特に重要なことについては授業時に口頭説明を加えても,それでも伝わらない学生さんもいる。これ以上の対策を教員負担でやるのは容易でないし,他の業務に支障が出るだけ(つまり,モラルハザード)である。
 

  • ゆえに「温故知新」ということで,

 かつての学生さんの頃の良かった場面を振り返り,今年度からは

  1. 大学とは,きっかけを与えてもらったら,後は自分で自分を育てる癖をつける場であること
  2. 口頭での対話をせざるを得ない状況をつくること

をさらに徹底していくこととする。
 
 前者の意図としては,プリント配布やLMSの掲示板・タイムライン・メールを使って事前連絡しているなら,それ以上の連絡をしない(大学から周知されているように掲示板やメールの「一日一回以上確認」を当然のこととして対応する)。また,連絡事項をよく読まずに確認メールが送られてきても,一回,「連絡の通りです」としか返答しない。
 
 と言っても,人はうっかりミスをすることもあるし,偶然に偶然が重なり情報を取れないかもしれないので,対面またはメールでの事後交渉の権利を学生さんに認める(ものの,待ちの姿勢の学生さんには対応しない)。
 
 また,「スマホを持ち歩くのが当然」という現在であっても,「対面での会話の重要性」を認識してもらうために,「毎回メンバーが変わるグループワーク」をやってもらう仕掛けも積極的に導入していきたい。
 

  • お節介がこの時代に合っていない

 (ハラスメントを避けたい,余計な軋轢を回避したいと考える人が多数である)のであれば,ルール至上主義における対話を導入し,ルールの範囲内で対話を繰り返すしかない。これにあたってのモデルとしては,ロールズの正義論あたりが参考になるかもしれない(つまり,機会の平等と結果の不平等が基本線というルール)。